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農園リストランテ

08.衛生的に飼う

ここに当牧場のガイドライン(のようなもの)をご披露します。
飼養管理衛生マニュアル(図面・写真)
飼養衛生管理マニュアル
日頃、私が行っている作業や衛生具などの配備状況をまとめたものです。当牧場の規模や実情を鑑み、「飼養衛生安全基準」に添っていないところもあります。現実に私ができるか、どうすれば無理なく牧場の衛生を護ることができるか、という視点でつくりました。清掃作業の内容にまで踏み込んでいるところもあります。参考になれば幸いです。
大事なことは、このガイドラインに私の作業が縛られているわけではない、ということです。私の作業がまず最初にあって、それを明文化したということなのです。
定期報告例(6頭未満の場合)
小規模1
小規模2
定期報告例(6頭以上であれば、こちらも必要になります)
6頭以上1
6頭以上2

基本的に、私は「衛生」を徹底して心がけています。
その思いは、ヤギを飼う当初からのものでした。レストランに併設しているため、牧場臭が一切しない牧場、であることをスローガンにしてきました。

まず衛生を保ち易い環境であるという幸運がありました。剥き出しの砂地がそうです。
私たちは、日本海の海岸から2kmほどのところに住んでいます。起伏のある隆起した丘の切れ間になります。雑草や雑木の力は旺盛で、一見、砂の土地とは分からないほど緑に覆われていますが、ヤギたちが普段生活するパドックなどは、ヤギに踏まれるため草が茂る間がなく、砂が剥き出しになります。
草が生えてこないのだから、採草という点では誠に困ったことで、隣接する裏手の山の斜面に採草地を設け、2種の牧草を混植しています。乾草が主体の飼い方になります。
ただ、「衛生」の観点からは理想的なのです。
水溜まりなどができず、水はけが良い乾燥地です。おしっこもすべて吸収されます。
夏場であれば、そこに直射日光。冬なら氷点下の木枯らし。さらには潮風が吹きます。
これで雑菌が抑制されるのです。

さらに私は「糞」をすべてさらいます。
毎朝、毎夕、小屋の床やパドックに落ちたフンをきれいに拾い集めます。拾ったフンが溜まったら堆肥場に持ち込み、1年ほど完熟させて、畑に戻します。食べこぼしの干し草なども掻き集め、焼却します。雨に濡れると腐敗を起こし、臭いや蠅の発生源になるからです。
これを毎朝、毎夕繰り返してきました。雨が降ろうと風が吹こうと、吹雪や台風などの大荒れの日でもやってきました。季節や天候、飼養数にもよりますが、日に4-6時間はヤギの世話に時間を費やします。その8割方はフン拾いなど、掃除の作業です。
ヤギ小屋の敷料は「モミガラ」を使っています。地域柄、いつでも無償で好きなだけ入手できます。汚れを感じたときに適機を逃さず交換しています。
飲み水は井戸水をバケツに垂れ流しし、いつでも新鮮できれいなものを飲めるようにしています。
干し草を首だけ突っ込んで飽食できるように設計しています。この干し草小屋にヤギが入り込んで汚すことはありません。
配合飼料は、別棟の小屋でコンテナに入れて保存しているので、盗み喰いや鼠の侵入などによる汚染の心配はありません。
鉱塩は、壁面にバスケットをくくりつけてその中に置いており、いつでも自由に舐めることができます。床に直置きすることはありません。
蠅や蚊、鼠の侵入を避け切ることはできませんが、周辺に水溜まりなどができないようにし、臭気や不衛生なもので寄せつけないよう注意します。また、侵入してしまったものを捕捉したり、殺虫するように努めます。
毎日の世話の時間は「観察」の時間でもあります。様子に変なところがないか、フンの状態や食欲はどうか、などをしっかり観ています。
こういうことなんです。きれいな環境を保ち、適切に餌や水をあげ、しっかり運動もさせる。日々の観察を怠らない。私にとって、衛生管理とは、愚直に基本作業をやり続けることに他なりません。

牧場は「劣化する装置」です。
たとえ最新の設備でスタートしても1年、2年経つ間に汚れ、それが堆積し、雑菌の温床になります。疲労骨折のように折れてしまえば、それが病気です。
その劣化を極力回避することを意識してきました。
そして、ヤギの栄養、運動などに留意し、免疫力をあげます。
病原菌の侵入圧とヤギ内部の抵抗力とで、常に後者側の壁が高くて優勢なら、病気になることはない、この一次予防重視が私の考えです。

ただ、私の飼い方で特異的にこだわるのはこれくらいで、あとは凡庸です。
餌は乾草と青草、配合飼料で野菜や果物の残渣が少し。栄養や食欲を増強するサプリメントなどは与えていません。子育ては親任せ。搾乳は手搾りだし、ディッピング剤などは使用せずウェットタオルです。駆虫も、基本、しません。腐蹄病の予防剤も乾乳軟膏も使いません。メーカーのカタログに心躍ることもなく、至って手つかずの領域がたくさんあります。
ヤギは素晴らしい子ばかりです。健康で体躯も堂々とし、泌乳量は高く、毛並みが艶々しています。是非、見学にお越しください。

飼って最初の数年は、私の牧場で病気などが発生しないのは運が良いからだと思っていました。あるいはなんらかの病変のサインを私が見逃しているのかも知れないと恐れていました。
やがて10年を超える歳月が経ち、存外、病気などに悩む飼い主さんが多く居ることに気づきました。一方、私の牧場のヤギたちは相変わらず平穏に日々を送り続けています。これにはなにかがある、単なる幸運ではなく、なにかの必然があると感じるようになりました。
いろいろ考えた結果が、この環境と衛生作業という一次予防のことです。
一次予防に力を入れ、病気を出さない飼い方はとても快適です。私が人の手をたくさん入れて飼っているように感じておられるなら、それは違います。基本だけはきちんと抑え、「手つかず」の領域をたくさん残すという考えです。ヤギが本来持つ魅力を十分発揮してもらうために、人の介入の少ない手法を選択しました。そのことをお伝えしたくて、この「ヤギ飼い記コーナー」をつくりました。

私は職業柄、ワインの勉強もしますが、自然農法でブドウを育てるワイナリーが増えています。そのためにはブドウをよく知り、ブドウの力を信じることが大事です。ヤギにも同じことが云えると思います。
ワインは、放置した果汁に野生酵母がとりついて発酵したことが起源です。やがて、農薬や培養酵母を用いて生産の量と質を管理・設計するようになりました。科学の力によります。その過程を過ぎ、今はブドウや自然に人が手を添えるかたちでのワインづくりが意識されるようになっています。このような醸造家は、ブドウづくりには強くこだわりますが、ワインの醸造に凝ることはしません。補糖やセニエなどしません。ブドウと酵母による「手つかずの領域」があってこそ、良いワインが生まれるという思想なのだと思います。

日本は四方を海に囲まれているので、私のように沿岸部にお住まいの方もいらっしゃるでしょうが、ヤギとなると、中山間部の風景が思い浮かびます。先に、ヤギの飼養には、沿岸の砂地の環境がさぞかし最適であるかのような書き方をしましたが、採草地の確保などで課題が多いことも確かです。
ヤギ飼いさんが100人居れば100通りのやり方があります。環境や事情や考えも100通りです。沿岸部には沿岸部の、中山間部には中山間部の悩みや良さがあります。それぞれの環境の特性を活かしたやり方が一番です。是非、健康で病気知らずのヤギ飼いを工夫してみてください。

<掃除を邪魔する肩乗りヤギ>

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